マグカップがゲームのコントローラーになる時代
こんばんは!マイクロソフトの大田です。
今回の記事の目的は、「日本発のクールな技術の紹介」です。
エヴァンゲリオンとエヴァンジェリストの違いを説明するというカジュアル方面の記事だけではなく、この記事で技術的に価値のある情報も提供していきたいと思います。
ちょっと捻った技術が見たい時は未踏事業へ!
6/21 (土)、6/22(日) の二日にかけて開催された未踏事業の成果報告会へ行って来ました。僕は仕事の都合で 6/22 (日) のみの参加だったため、この記事では 22 日に見た内容のみ紹介します。
IPAのYoutube チャンネルにて毎年の発表の動画が配信されているのですが、今年の報告会の動画は公開されていないため、まずは文章と Web へのリンク等で紹介させて頂きます。
どれも素晴らしい発表だったのですが、特に自分にフィットした以下2つの発表について紹介します。固い文面ではありますが、できるだけ噛み砕いて説明します。
- タッチセンシティブなラピッドプロトタイプ作成のためのツールキットの開発
- コンテクストに応じた変換候補を提示する入力システムの開発
タッチセンシティブなラピッドプロトタイプ作成のためのツールキットの開発
大野誠さんによって開発されたこの製品は、「センサーを付けた全てのものをコントローラーにできる」 ものです。
動画を見ることで衝撃を感じるとは思いますが、さらに詳細に知りたい場合にはこちらのページをご覧ください。
動作原理としては、物体の振動特性を機械学習させ、どの場所を触られているかを認識すると理解しています。物体に音波をあてると振動をしますが、人に触られている時にはその特性が変化します。例えば、お椀の右側を触った時の振動特性、左側を触った時の振動特性を機械学習することで、どこを触られたかを判別できるようになります。
その結果として、コントローラーとして利用できるようになるという寸法です。動画の中には2つのセンサーが出てきますが、片方が振動を出すもの、もう一方が振動を認識するセンサーです。
ACM の Best Paper Award も受賞しているらしく、論文を読むことでさらに面白い知見が得られそうです。
コンテクストに応じた変換候補を提示する入力システムの開発
慶応大学の中園さん、臼杵さんのお二人で作成された入力補助システム (IME) です。
通常の IME はだいたい以下のような動作をします。
- ローマ字 -> かな変換
- かな -> 漢字変換
上記の変換のうち 2 の部分においてユーザーの要望に添った候補となるために、IME の開発者は工夫をするわけですが、この仕組みの場合、主なインプットはユーザーの入力した文字のみとなります。
一方このプロダクトは、文脈のコンテクストだけではなくユーザーの現在の状況(コンテクスト)全体をインプットとして、変換候補を推薦します。
例えば、6/20 のギリシャ戦の時に渋谷でスマートフォンで文字入力を始めるとします。
そうすると、時間、場所、ソーシャルメディアの情報等を元に、「渋谷」「サッカー」「ギリシャ戦」「観戦」などの候補を提示します。これらの候補をタップし続けると「渋谷でギリシャ戦観戦なう」のような文章が作成できます。
(もちろん、通常の変換候補も表示される仕組みとなっており、変換候補は合計で2列表示されることになります。)
この IME の感動ポイントは、破壊的イノベーション的なコンセプトです。
「フリック入力等で入力は楽になったものの、全ての文字をキー入力している。そもそも自分の欲しい候補が表示されているのであれば、キー入力をしなくとも、それをタップするだけで楽に文章がかけるはず。」
もしこのIME が完成したら、文字入力は劇的に進化しそうだなぁと思い、個人的には一番コンセプトの好きな製品でした。絶対購入したいので、早く販売を始めてほしいなぁと思います。